岩波文庫【青】 解説目録2021を辿る(第1回)

岩波文庫を楽しもう! 第3回

岩波文庫解説目録2021に掲載されている、青帯(日本思想)の6作品を紹介します。

まずは、青1-1 室町時代に活躍し、現代の能楽の基礎を作り上げた世阿弥(1363年? – 1443年?)が著した「風姿花伝」です。偉大な父・観阿弥の教えを継承し、世阿弥ならではの視点から能の神髄を語った最古の能楽論の書であり、日本最古の演劇論として知られます。

少し難解な文章と思いますが、あの繊細な美しさに満ちた名作の数々を手掛けた世阿弥の筆致の素晴らしさには感嘆します。そして、能の世界にとどまらず、現代を生きる我々の人生のあり方を示す書としても、「風姿花伝」は大きな価値を持っていると言えるでしょう。

世阿弥木像(正法寺)

青2-1は、日本人なら誰もが知っている剣豪・宮本武蔵(1584年?〜1645年)が著した「五輪書(ごりんのしょ)」です。吉川英治の有名な小説や、大人気漫画「バカボンド」の主人公のナマの考えが読めるって、思えばスゴいことではないでしょうか?

内容は、当代きっての剣士であった武蔵が、自身で窮めた剣術の奥義についてまとめたもの。現代でもゴルフや野球の中級者以上のマニュアル本はごまんとありますが、その草分け的存在と言ったところでしょう。実際に剣道に携わっている方は、江戸初期(実際に人を斬ることがあった時代)にはこうした考えがあったのか!と確認してみられるのも面白い、と思います。

宮本武蔵肖像(島田美術館)

青4-1は、荻生徂徠(1666年 – 1728年)の「政談」です。徂徠は医者の子でありながら、青年期は不遇と貧窮に見舞われます(落語「徂徠豆腐」は彼の苦しかった時代を描いた話)。しかし、彼は時間を無駄にせず、学問にしっかり向かい合ったため、彼の勤勉と博識はやがて幕府の目に留まり、徳川綱吉の側用人であった柳沢吉保に重用され、最終的には徳川吉宗の諮問を行うほどの学者になります。

彼の名を後世に伝えたのは、何と言っても赤穂浪士への厳しい糾弾でしょう。世論が浪士の赦免を叫ぶ中、社会秩序を糺すため、彼は浪士は切腹すべしと強調しました。結果はご存知の通りです。

そうした赤穂浪士への批判も含め、徐々に衰退を見せ始めてきた江戸幕府体制の締め直しを論じているのが「政談」です。この時代に数多くいた儒学者や朱子学者の「学問のための学問」に陥らず、リアリスティックで現代的な目線から政治を俯瞰している彼の眼力は素晴らしいです。

青8-1~3は、「葉隠」です。佐賀藩士・山本常朝の口述を田代又左衛門陳基が筆録したもので、有名な「武士道といふは死ぬ事と見付けたり」の言葉を生み出しました。文治が進んで官僚的に陥った江戸・上方の武士に対して、生死が身近だった戦国時代の気風を強く遺す九州の武人の生き様を高く評価しており、一日一日、死ぬ気で生き抜いていく覚悟の大事さを説いています。

青10-1は、「養生訓・和俗童子訓」です。江戸時代の本草学者、儒学者である貝原益軒(1630―1714)が記しました。前者は健康・長寿を保つための心構え、具体的な食餌法など養生の道を説き、後者は儒教の子育て観に基づいた、日本で最初の体系的な教育書として知られています。今日でいう新書ジャンルと言ったらよいでしょうか。

益軒の業績は、彼が活躍した福岡の地、福岡市博物館で振り返ることができます。

福岡市博物館について(リンク先に移動)

青10-2はすごくマニアック。貝原益軒の「大和俗訓」です。それまで武士が学ぶものであり、民衆にはなじみの薄かった儒教を、分かりやすい言葉で紐解き、実践を促しています。現代日本人の行動に影響を及ぼしている儒教の考えは、こうした書物によって根付いたのかもしれません。

まずは6作品の紹介でした。続きはこちらでご覧ください。

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