篇外余録(1)史上最強の哲学入門

読みやすさ抜群!最高の哲学入門書

私が細々と運営する「令和文藝館」は、主に小説の紹介・感想を中心にクドクドと書いていますが、最近は新書や解説本にも面白いものが多く、それらの感想を「篇外余禄」というカテゴリで括ることにしました。

その第一弾として取り上げるのが、飲茶(やむちゃ)さんが発表した「史上最強の哲学入門」という一冊。

実は、一冊ではございませんで、「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」 という続編もあります。

私はこれまで哲学というジャンルにどうしても馴染めなかったのですが、たまたま評論家の岡田斗司夫さんがYouTubeでこの本をべた褒めしているのを見て、物は試しと購入。

これが大当たりでした!

正直、読む前はキワモノ本ではないかという危惧があったものの、読み進めるうちに続きが気になり、食事も後回しになるくらい夢中になりました。

とにかくこの飲茶さん、ストーリー運びと言葉のチョイスがうまい。他の本では小難しくガチガチに書かれている哲学者の言葉と生き様をまるで漫画のストーリーのように起伏をつけて描き出す。

それもそのはず、飲茶さんは「グラップラー刃牙」という格闘マンガが大好きで、哲学者をあたかも「刃牙」のキャラクターのように登場させようと思ってこの著作を書き始めたのだそう。よく見れば、特徴のある表紙は、「刃牙」の作者、板垣恵介さんによるものです。

ひょっとして、漫画とのコラボレーション?と思って買うのをやめようと思った方もいるかもしれませんね。ご心配なく。中身は非常にしっかりしていて、解釈も精確かつニュートラル。非常に充実した内容になっています。

また、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェといった有名どころだけでなく、レヴィ=ストロース、デリダ、フッサールと言った近現代の哲学者にもきちんと言及されており、哲学をこれから学ぼうと言う大学生や受験勉強に使いたいお子様にも十分な教材になり得ます。

そしてとにかく解説が分かりやすい。

哲学者も考え悩む、一介の人間であることが飲茶さんの丁寧な文章から伝わってきます。

また、章中に突然現れてびっくりするのですが、2000年以降の日本の政治の混乱について、飲茶さんの考え方もしっかり刻まれています。私たち現代の日本人が、思考停止によってどれだけ危うい個と社会を生きているのか、改めて考えさせられました。

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