シャーロック・ホームズの冒険を冒険する Chapter 5

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グラナダ制作によるみごとなシャーロック・ホームズ

これまで4回に亘り、「シャーロック・ホームズ」シリーズの“本”について見てきましたが、最終回は有名なテレビドラマについてご紹介したいと思います。

さて、シャーロック・ホームズの映像化はかなり古い時代から行われ、確認できる最古のものは1903年に発表された短いフィルムです。

映画というより、ほとんど映像実験にしか見えませんね。しかし、リュミエール兄弟がパリで動画を有料公開したのが1895年。また、作者コナン・ドイルは1903年時点なら現役バリバリで、『シャーロック・ホームズの帰還』(1905年)、『恐怖の谷』(1914年)、『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(1917年)、『シャーロック・ホームズの事件簿』(1927年)はまだ書かれていません。

それだけ、当時のホームズ人気は絶大で、映画草創期からネタにされていたということです。

その後も膨大な量の映画が撮影され、1940年代からはベイジル・ラスボーン、ロナルド・ハワードによるテレビドラマがアメリカで製作されました。特にハワード版は大変な人気を博し、日本でもかなり以前に英会話教材としてハワード版が使用されたことを覚えています。

その後、ソ連でも映像化されるなど、ホームズ人気は共産圏にまで達しました。そして、いよいよ1984年に、有名なグラナダテレビでのテレビドラマが放映されます。

主役はジェレミー・ブレッド。彼は有名な映画「マイ・フェア・レディ」で貴族のフレディーを演じ、また数々のシェイクスピア劇で高い評価を得ていました。最初にグラナダ版を見た時、その風貌やしぐさがあまりに原作のイメージ通りだったのでびっくりしましたが、本場イギリスでも多くの方がそう思われたようです。

ワトソン役は2人います。ひとりはデビッド・バーク。シェイクスピア劇のテレビ映画や「名探偵ポワロ」など、文学作品系ドラマに数多く出演しています。第13話「最後の事件」まで演じました。

次はエドワード・ハードウィック。彼もバーク同様、文学系作品に多数出演。14話以降のワトソンを演じ切りました。

注視するまでもなく、2人のワトソンの印象はかなり違います。見る方によって、それぞれのファンがいるようですね。私はバークの「おやっさん」的な下町感にどことなく惹かれます。

さて、このグラナダ版は19世紀ヴィクトリア朝のロンドンの情景を忠実に再現しており、かつ登場人物の風貌から性格、癖まで忠実に描いています。ハドソン夫人なんて、原作のイメージ通りですし、彼女が運んでくる料理まで19世紀のイギリスの食卓を彷彿とさせます。

また、このドラマは大変名場面が多い。第4話「美しき自転車乗り」での格闘シーンにおけるジェレミーの華麗な(?笑)ステップ。第19話「もう一つの顔(唇のねじれた男)」の怪奇的なオチのシーン。第33話「犯人は二人」での珍しい恋愛シーン。

他にもファンの方には三者三葉、お好みの話とシーンがあるはずで、高くはつきますが、ぜひ全話ご覧になって、このドラマの素晴らしさを堪能いただきたいと思います。

さて、このドラマはNHKで放映され、その後何度も再放送されていますが、ホームズ役の露口茂さん、ワトソン役の長門裕之さんと福田豊士さんの吹き替えは本当に見事。俳優以上に、小説のホームズがリアルに甦ったかのようなハイレベルの演技力です。

露口茂さんと言えば、おじさん世代には「太陽にほえろ」の山さん役ですが、山さんのあの知的で秘めた情熱を漂わせながら、ホームズの怜悧なキャラクターを演じ切っているのも、たまらない魅力となっています。

最後に、最近面白い本が出版されたのでご紹介します。

このドラマでホームズを演じたジェレミー・ブレッド(1933年11月3日 – 1995年9月12日)は、その輝かしい芸歴の裏で双極性障害を患うなど、波乱万丈の人生を送りました。また、ドラマのホームズがあまりにインパクトがありすぎて、彼の人生に暗い影を落としたこともよく知られています。

そんなジェレミー自身の言葉を引用しながら、「ホームズ」製作当時のスタッフや関係者の証言を集め、様々なエピソードをまとめたのがこの本です。

あのシーンを撮影するのにそんな苦労があったのか、ジェレミーは現場でこのように考え、このように振る舞ったのか、と読んでいて唸りました。

皆さんも映像を買いそろえて、各話を見ながら読み進めると、アドレナリンが出まくること請け合いです。ひょっとしたら、ホームズ沼から抜け出せなくなるかもしれませんが、こんなに有意義で高雅な余暇の過ごし方はないと思います。この本もお勧めです。

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