吉川英治文庫(2)坂東侠客陣

侠客剣豪相乱れる白熱の展開

著者:吉川英治
〇作品名 坂東侠客陣(ばんどうきょうかくじん)
〇連載「キング」大日本雄辯會講談社
1926(大正15)年11月号
〇講談社・吉川英治文庫 2/1977年/ISBN 4-06-142002-X

このブログでは、日本の国民的大衆小説作家である吉川英治(よしかわ・えいじ 1892(明治25)年8月11日 – 1962年(昭和37)年9月7日)の作品について、徹底的に紹介していきます。

今回は2回目。「坂東侠客陣」です。これを読んだことがある方は、かなりの吉川オタクと言って良いでしょう。

と言うのも、1990年代から流通している「吉川英治歴史時代文庫」には、この作品は収録されていません。それどころか、2020年5月現在、この作品を読める現役の書籍は皆無なのです。

電子書籍kindleストアにも見当たりませんでした。下記の電子書籍の選集にも未収録です。

唯一、古書としての流通に望みを託せるかもしれません。

さて、この作品は一級の剣士たちのすさまじい戦いを描きながら、誰が真の主人公というわけではなく、それぞれの魅力が素晴らしく引き立っているところがポイントです。

室町時代に興り、日本兵法三大源流の一つ、かつ最古の流儀とされる念流剣術の秘文を巡り、浪人・乾銑之助、謎の男・半次、実在の侠客・平手造酒、美しき剣士・福王豹馬が火花を散らします、秘文の行方を知るヒロイン、雪乃も吉川キャラらしくて良いですね。

ちなみに、平手造酒は実在の任侠で、彼の活躍を描いた講談・浪曲が明治から昭和にかけてたくさん作られました。代表的なものが、天保水滸伝です。

また、映画や歌謡曲にも平手造酒は登場し、彼のことを歌った田端義夫の「大利根月夜」は空前の大ヒット曲となります。今はだいぶいらっしゃらなくなりましたが、昭和の頃はこの歌を好んで口ずさむ方をよくお見掛けしましたね。

剣士たちが騙し合い、そうかと思えば情けを掛け合い、そしてクライマックスで火花を散らすという吉川ワールドの王道がすでにこの作品で完成されています。ぜひご一読を!

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