吉川英治文庫(3)神変麝香猫

伝奇小説の秀作、切支丹の大逆襲

著者:吉川英治
〇作品名 神変麝香猫(しんぺんじゃこうねこ)
〇連載「講談俱楽部」大日本雄辯會講談社
1926(大正15)年1月号~1928(昭和2)年12月号
〇(1巻)講談社・吉川英治文庫 3/1975年/ISBN 4-06-142003-8
(2巻)講談社・吉川英治文庫 4/1975年/ISBN 4-06-142004-6

 

非常におどろおどろしく、でも一度聴いたら忘れられないタイトルですね、「神変麝香猫」。

令和の今日でも多くの人々に愛されている猫。しかし、「化け猫」という妖怪がいるように、可愛さの裏には底知れぬミステリアスさ、イジメたら祟られるような怖さがあります。

そんな猫が大活躍?いやそれは最初の方だけで、「麝香猫」の異名を持つ美女・お林が縦横無尽に暴れまわる、吉川英治初期の名作「神変麝香猫」を今回はご紹介します。

「神変麝香猫」は、吉川英治が大正15年から昭和2年のまる3年をかけて、「講談倶楽部」に発表しました。物語は島原の乱後の江戸時代を舞台に、キリシタン大名の娘「お林」と謎めいた剣士「夢想小天治」を中心に、徳川幕府と対抗する伝奇的な活劇を描いています。

島原の乱 1637年(寛永14年)

登場人物:

お林: キリシタンで、父親の国外追放後、密かに育ち、武芸を身につけた美しい女性。徳川幕府に対抗し、無辜の民の復讐を誓っている。

夢想小天治: 素行の悪い剣士で、勘当され浅草の侠客の家に引き取られた若侍。物語の主要な登場人物で、「お林」と関わりを持つ。

画猫道人: 会津宗因を名乗り、軍師として優れた能力を持つ。お林の育ての親でもあり、島原の乱の残党たちを率いている。

陣佐左衛門: 島原の乱で天草四郎時貞の首を取ったと言われる細川家の足軽。お林の復讐の対象。

松平伊豆守信綱: お林と夢想小天治にキリシタン政策の改革を依頼し、物語の展開に関与。

昭和33年には映画化された

物語は、陣佐左衛門へのお林の復讐から始まります。彼女は密かに陣佐左衛門を惹きつけ、その中で夢想小天治も事件に巻き込まれます。お林の一派には画猫道人や「むささび小僧」などがおり、彼らは島原の乱の残党でもあります。お林の目的は、幕府のキリシタン弾圧政策に反抗し、江戸城の抜け穴を利用して秘密の資金と「黒縄巻」と呼ばれる秘図を奪取することでした。

物語は、「黒縄巻」を巡る争奪戦として展開されます。幕府転覆を企む由井正雪も物語に登場し、「黒縄巻」を狙います。その一方で、幕府はキリシタン政策を改め、キリシタンたちへの取り締まりを緩和し始めます。

家光は精神的に不安定になり、辻斬りを行い、さらなる苦悩に苦しむこととなります。ついにはお林に捕らえられてしまいますが、物語は最終的に幕府の政策改革によって解決に向かいます。お林とその仲間はキリシタン政策の緩和を約し、家光を開放し、幕府に訴えないことで事件が終結します。

物語は歴史的な出来事とフィクションを結びつけ、壮大な冒険活劇を展開しています。まるで荒唐無稽なストーリーながら、ひょっとしたら歴史の裏側ではこういうことが起こっていたのでは?と思わせるような、巧みな構成力とリアル感が光る魅力的な作品です。

まさに日本のアレクサンドル・デュマ。世界の冒険小説を彷彿とさせる、吉川英治初期の伝奇小説の面白さをぜひ堪能してください。

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